“芸能人は歯が命”とよく言われていますが、犬猫も歯の健康状態が寿命に影響をあたえるようです。犬は人間と同じように歯周病があります。3歳以上の犬猫の約80%が歯周の健康に問題があるといわれています。
フードの食べかすや細菌など(歯垢)が歯と歯肉のあいだの歯肉ポケットに溜まり炎症が起こると歯肉炎と呼ばれます。歯肉炎が進行すると、歯を支えている組織も壊れていき、細菌も増殖し、歯肉以外の歯周組織にまで炎症が及ぶと歯周炎となります。重度に進行した場合、歯が抜けたり、歯根周囲の骨が溶けてしまい、口の中や外に穴が開いたり、フードを食べたときに顎に骨折が起きることもあります。それだけでなく、細菌が血行性に循環すると、肝臓や腎臓、心臓などの全身の内臓にも悪影響を及ぼすこともあります。成犬の歯の数は全部で42本、成猫の歯の数は全部で30本です。抜けている歯、もしくはグラグラ動揺している歯がないか確認してみてください。
歯垢を放置すると石灰化して歯石となりますが、犬では3日、猫では7日であっという間に歯石になるようです。そこで大切なのが日常でのハミガキです。動物の場合も3日に1回程度の定期的なハミガキをしてあげることで、歯石形成の予防が可能です。しかしながら、口の中を触ろうとすると嫌がることが多いかと思います。そのような場合は、いきなりハブラシを使うのではなく、お口の周りを触る練習から始めてみて、慣れてきたらペーストタイプの味付きハミガキ粉やシート状の布のようなもので歯の表面を拭いてあげるというように低刺激なことから徐々に実施していただければと思います(シート状のものは誤って食べられないよう十分注意してください)。一番大事なのは、子犬の社会化期(生後4ヵ月齢まで)に口を触ったりハミガキの習慣をつければ、成犬になっても口の中を触らせてくれるようになります。この時期に受けた影響は、その後の成長を大きく左右するといわれていますので、非常に大切な期間です。
一度歯石になってしまうとハミガキでは落とせません。当院では歯科専用の超音波スケーラーで口腔内の歯石の除去が可能です。すべての歯石をきれいに取り除くためには、動物が起きている状態だと口の中を切ったりして危険な場合もあるため、当院では20-30分程度の全身麻酔をかけて実施しています。また、歯周病で動揺している歯や根尖膿瘍が起きている(歯肉が膿んでいる)部分の歯に関しては抜歯を行います。
歯石がついている、口臭、涎の量が多い、フードを食べるときにポロポロこぼす、硬いものを食べようとしない、などの症状があるようであれば歯周病になっている可能性があります。また、高齢の場合は口の中に腫瘍(癌)が出来ている恐れもあります。お口のトラブルで困ったことがあれば、ご相談ください。
この記事へのコメントはありません。