4月から予防の季節ですね。混合ワクチンの予防接種についてお話します。当院では犬は5種と7種、猫は3種の混合ワクチンを置いています。
犬 5種:ジステンパーウイルス、犬伝染性肝炎、犬アデノウイルス(2型)、犬パルボウイルス、犬パラインフルエンザウイルス
犬7種:上記ウイルス+レプトスピラ・カニコーラ/イクテロヘモラジー(2種)
猫3種:猫ウイルス性鼻気管炎ウイルス(ヘルペスウイルス)、猫カリシウイルス、猫汎白血球減少症ウイルス(パルボウイルス)
上記太字で記したウイルスは感染し重症化した場合は致死率が高く、命に関わる場合があるため、重要なワクチン(コアワクチン)と言われています。当院では、2015年に改訂された世界小動物獣医師会(WSAVA)のワクチネーションガイドラインに基づき予防接種を行っております。子犬・子猫の場合、初回が2ヶ月齢、2回目が3ヶ月齢、3回目が4ヶ月齢で接種します。その後、1歳になってから1回接種します。成犬の場合は1年に1回の予防接種、成猫で感染リスクが少ない場合は3年に1回の接種もしくは抗体価検査、感染リスクが高い場合には1年に1回の予防接種を推奨しています。
ジステンパーウイルスは飛沫・空気感染します。初期症状は発熱や食欲低下・鼻汁・目脂など風邪のような症状ですが、免疫力が低い子だと消化器や呼吸器で細菌の二次感染がおこり重症化します。痙攣や歩行異常などの神経症状を起こすこともあります。鼻やパッドが角化することもあります。
犬伝染性肝炎は、アデノウイルス1型の経口感染で発症します。致死率は10-30%と言われ、元気消失、食欲低下、嘔吐、下痢、角膜炎、発熱など様々ですが、感染しても症状が出ない不顕性の場合や、高熱と急激な虚脱を起こし1日以内に死亡する突発性致死型と言われるタイプや、肝炎を起こし黄疸を呈して死に至る場合もあります。この病気の回復期に見られるブルーアイと言われる症状は、角膜浮腫により青白く見える濁って見える現象で、特徴的な所見です。
犬アデノウイルス(2型)は犬伝染性喉頭気管炎を起こし、接触・飛沫感染します。症状は咳やくしゃみ・鼻汁を特徴とする上部気道炎を起こし、ケンネルコフと言われる子犬の風邪の病原体の一つと考えられています。他の病原体との混合感染により重症化し、肺炎を引き起こす場合もあります。
パルボウイルスは、感染力が強く、免疫力が低い犬が感染した場合は致死率が高く危険な感染症です。激しい嘔吐・下痢(血便)により重度の脱水を起こす腸炎型と突然の虚脱・不整脈や呼吸困難を起こす心筋炎型があります。
犬パラインフルエンザウイルス感染症は呼吸器症状を特徴とし飛沫感染します。咳や鼻汁、発熱、元気・食欲低下などの風邪様症状を起こすケンネルコフの病原体の一つと言われています。単独感染では軽症が多いですが、他の病原体と混合感染すると重症化すると言われています。
レプトスピラ病は、感染し発症した場合、肝臓や腎臓に重度な障害を起こし死に至る危険性があります。レプトスピラはらせん菌(細菌)で、人にも感染する人獣共通感染症です。ネズミなどのげっ歯類が高い確率で菌を保有しており、尿中に菌を排泄します。その尿により土壌や水などの環境が汚染されます。レプトスピラは池や沼地などの湿気が多い場所を好みます。キャンプ場などの河川や池があるような場所、山などのアウトドアレジャーによく出かけるご家族は7種混合ワクチンを推奨します。台風などの増水・洪水後にも注意が必要です。
猫ヘルペスウイルスや猫カリシウイルスは、いわゆる猫風邪と言われる原因の病原体で感染力が高いです。主な症状は、くしゃみ、鼻水、流涙、眼脂、口内炎などです。発熱したり食欲不振になることもあります。やはり免疫力が低かったり、体力が落ちていると重症化し、死に至る場合もあります。ウイルスは感染した猫の唾液や鼻水、涙に排泄されますので、健康な猫が感染猫に直接触れたり、くしゃみで飛沫した唾液や鼻水に触れたりすると感染してしまいます。多頭飼育のご家庭は特に注意が必要です。
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