動物病院できる血液検査
人と同じように、犬猫の診療で多く行う検査の一つに血液検査があります。
色々項目があるし、結局検査で何がわかるの?という方もいるかと思いますが、
病気を診断する上で言葉が話せない動物においてはとても重要な情報源の一つとなります。
血液検査だけで全ての病気がわかるわけではないですが、多くの病気の診断や早期発見につながります。
血液検査には大きく分けて、①血液化学検査、②完全血球計算、③内分泌系検査、④血液凝固系検査、などがあります。
今回は血液化学検査の主要な項目について、いくつか紹介します。
血液化学検査
蛋白質(TP・Alb・Glob)
TP(総タンパク)は、血液中のたんぱく質の総量を示します。
栄養状態、肝臓・腎臓の機能や免疫機能の指標となります。
その中でもアルブミン(Alb)は血液中に多く含まれる重要なたんぱく質です。
脱水などで上昇、肝臓、腎臓、腸などの疾患や出血で低下します。
グロブリン(Glob)は脱水、慢性炎症、腫瘍、一部の感染症などで上昇し、低下は免疫異常などが疑われます。
肝数値(ALT・AST・ALP)
アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)は、肝臓の細胞(肝細胞)に多く含まれている酵素で、その上昇は肝細胞の障害(ダメージ)を表します。
アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)は、肝臓、骨格筋、心筋に多く含まれている酵素です。
主に肝臓の障害に用いられますが、AST>ALTの場合は骨格筋の損傷を疑います。
また、赤血球内にも含まれるため、溶血の際にも上昇する可能性があります。
アルカリフォスファターゼ(ALP)は、主に胆道系疾患(胆汁うっ滞、胆管肝炎など)で上昇する酵素です。
骨の成長期、副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)、ステロイド内服、腫瘍などの影響により上昇する場合もあります。
また、猫の場合は、肝リピドーシス(脂肪肝)、甲状腺機能亢進症で上昇することがあります。
腎数値(SDMA・BUN・Cre)
対称性ジメチルアルギニン(SDMA)は、腎臓から排出される代謝産物で、早期の腎疾患の発見を可能にする犬猫の新しい腎機能マーカーです。
腎臓は左右1つずつありますが、全体の40%の機能が低下した時点でSDMAが上昇してきます。
尿素窒素(BUN)は、腎臓から排出される代謝産物で、腎機能低下や消化管出血、脱水、食事中のたんぱく質過剰などで上昇し、肝機能低下で低下します。
クレアチニン(Cre)は、腎臓から排出される代謝産物で、腎機能が全体の75%低下すると上昇してきます。
低下の原因として、著しい骨格筋の減少などがあります。
血糖値(Glu)
グルコース(Glu)は、糖尿病や低血糖の診断に用います。
食後や興奮などのストレス時やステロイドの影響により上昇します。
電解質(Na・K・Cl)
ナトリウム(Na)、カリウム(K)、クロール(Cl)は電解質と呼ばれています。
細胞の浸透圧調節や体内の酸・塩基平衡調節、神経伝達など生命維持に重要な機能を担っています。
腎疾患、内分泌疾患、脱水、嘔吐、下痢など様々な病態で変動します。
上がりすぎても下がりすぎても危険な項目です。
急性炎症マーカー(C反応性蛋白(CRP)(犬)、血清アミロイドA(SAA)(猫))
全身性の急性の炎症がある場合に上昇するたんぱく質で、炎症の改善または悪化に伴って急激に変化します。
食欲不振、消化器症状(嘔吐・下痢など)、発熱、腹痛など様々な症状で、測定することが多い項目です。
当院では上記2機種、IDEXXのカタリスト ワン、FUJIFILMのDRI-CHEM IMMUNO AU10Vを使用して、血液化学検査、内分泌(ホルモン)検査を行っております。
今回ご紹介した血液化学検査の項目は一部ですが、いずれも重要な項目です。
健康診断の際は、是非この辺りの項目を注目してチェックしてみてください。
この記事へのコメントはありません。