完全血球計算(Complete Blood Count; CBC)
前回は血液化学検査について少しお話しましたが、今回は血球計算について簡単に説明します。
血球とは、血液中を流れている赤血球、白血球、血小板のことを指します。
血球計算とは、血液の構成成分であるこれらの数を計測し、貧血の有無や種類、炎症・感染・ストレス兆候の検出、血液の癌、凝固異常などの状態を把握・予測できる検査です。
機械で測定するだけでなく、血液塗抹標本を作り、顕微鏡で細胞の形態を評価することにより、上記病態や血球や血液に寄生する感染症の有無を判定することもできます。
それでは、それぞれの血球について簡単に説明します。
赤血球
鉄を含むヘモグロビンを持ち、肺から受け取った酸素O2を全身へ運搬する重要な細胞です。
また、末梢組織に酸素を受け渡した後には、代わりに二酸化炭素CO2を受け取って肺へ戻し体外へ放出します。
この赤血球数が少ない状態が貧血といい、大量出血や中毒、自己免疫疾患、感染症、慢性炎症、慢性腎臓病、鉄欠乏、内分泌疾患、骨髄疾患、腫瘍性疾患など様々な原因で起こり得ます。
重度な貧血になると低酸素血症となり全身の機能が低下し、最悪の場合、死に至ることもあります。
逆に、基準値よりも多い場合は多血症といい、脱水(相対的増加)、低酸素症、腎臓腫瘍、骨髄疾患などでみられることがあります。
白血球
白血球は免疫の細胞で、炎症や病原体の感染に対抗する体を守る細胞です。
炎症や感染などで末梢血液中の総白血球数は変動しますが、以下の5種類の白血球を分類することでより詳細に体内の異常を発見できます。
好中球
末梢血液中で最も多い白血球で、血液中をパトロールしており、病原体(主に細菌)から体を防御しています。
好中球数が上昇している場合は、運動、ストレス、炎症、自己免疫疾患などの原因が考えられます。
低下している場合は、ウイルス感染、激しい細菌感染による敗血症、骨髄疾患、飢餓などです。
リンパ球
リンパ球は血液中とリンパ液を流れながら、病原体や異物の侵入に備えています。
高値の場合、慢性炎症、自己免疫疾患、白血病、副腎皮質機能亢進症(アジソン病)などの可能性があります。
低値の場合、ストレスなどで見受けられます。
単球
末梢血液中の正常白血球の中で最も大きい細胞で、感染に対する防衛の開始に重要な役割を担っています。
血管外へ移動し、感染・炎症部位に到達するとマクロファージへ変身し、病原体や異物を貪食して、他の白血球(免疫)の活性化を促します。
高値は、ストレスや慢性炎症でみられます。
好酸球
細胞質に好酸性の顆粒をもつ細胞で、アレルギー反応や寄生虫感染などで増加します。
ストレス時に低下を示すことがあります。
好塩基球
細胞質に好塩基性の顆粒をもつ細胞で、特定の抗原と反応するとヒスタミンなどが放出されアレルギーを誘発します。
慢性炎症や内分泌疾患などで増加することがあります。
血小板
血管が損傷や障害を受けて出血が起きた際に、止血を行い、血管や創傷の修復に関与しています。
高値は、慢性炎症や血小板再生反応などで見られます。
低値は、血小板凝集、大型血小板、慢性出血による消費亢進、免疫介在性血小板減少、DIC(播種性血管内凝固症候群)などで見られます。
町田市鶴川のダクタリ動物病院まちだドギーリーグではIDEXX社のProCyteと顕微鏡により血液塗抹を観察することでCBC検査を行っています。
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